
革は、なぜ古くなるほど美しいのか。
LEATHER KNOWLEDGE
タンニン鞣し革だけが持つ、時間という素材。
手に取った瞬間は、まだ少し硬い。
でも、使い続けるうちに艶が生まれ、色が深まり、持ち主の手の形に沿って表情が変わっていく。
これは偶然ではなく、革の製法が生み出す、計算された変化です。
タンニン鞣し革が持つ「経年変化」の仕組みを、少し深く知ってみましょう。

知識① ─ 鞣しとは
「鞣し」って何だろう? 革の個性はここで決まる。
生の動物の皮は、そのままでは腐敗してしまいます。これを安定した素材へと変える工程が「鞣し(なめし)」です。
現代の革製品の約8割が採用している「クロム鞣し」は、化学薬品(クロム塩)を使うことで短時間・低コストで加工できます。柔らかく均一な仕上がりが得やすく、ファッション業界で広く使われています。
一方、「タンニン鞣し(植物タンニン鞣し)」は、オーク・ミモザ・チェスナットなどの樹皮や果実から抽出したタンニン液に革をじっくりと漬け込む製法。数週間から数ヶ月かける工程は手間がかかりますが、繊維が密に締まり、コシのある革に仕上がります。
そして最大の特徴が、経年変化。使い続けるほど革が育つのは、このタンニン成分と空気・光・皮脂が反応するためです。

知識② ─ 経年変化のしくみ
なぜ使うほど深みが増すのか。色変化のメカニズム。
タンニン鞣し革の表面には、タンニン成分が繊維の奥まで浸透しています。
これが空気中の酸素や紫外線にさらされると、ゆっくりと酸化が進み、革の色が濃くなっていきます。これを「エイジング」または「経年変化」と呼びます。
さらに、手で触れるたびに皮脂や油分が革に吸収され、表面に自然な艶が生まれます。新品のときはマットで素朴な表情だった革が、使い込むうちに滑らかに輝いていく──この変化は、クロム鞣し革にはほとんど起こりません。
また、革の繊維が使用者の動作に合わせて柔らかくなっていく「なじみ」の感覚も、タンニン鞣しならでは。育てる革、という感覚はここから来ています。

知識③ ─ 革の個性・産地
同じ「タンニン革」でも、こんなに顔が違う。
一口にタンニン鞣し革といっても、使う植物の種類・鞣し液の配合・仕上げ方法によって、まったく異なる表情が生まれます。
マルゴー(イタリア産)
ミモザタンニンを主体に、フルベジタブルタンニンで鞣したイタリア・バダラッシ社の革。きめ細かく、使い始めからしなやかで扱いやすいのが特徴。エイジングとともに豊かな艶と深みが増します。
ヴァケッタ(イタリア産)
イタリアの伝統的製法で、オリーブオイルを加えながら鞣した革。豊富な油分を含み、コシと柔らかさを兼ね備えます。使い込むほどに色が深まり、独特の光沢が出てきます。
エルバマット(イタリア産)
フルベジタブルタンニンで仕上げたマットな表情の革。さらっとした触感から始まり、使用によって自然な光沢が現れるグラデーションが魅力です。
産地やなめし師の哲学が、そのまま革の個性になる。それがタンニン革の奥深さです。
革を知ると、選ぶ目が変わる。
素材の背景を知ったうえで手に取ると、革との付き合い方が変わります。
使うほど育つ革で、何を作りますか。
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Frequently Asked Questions
革素材について
基本的なお手入れはシンプルです。乾燥が気になってきたら、革専用のクリームやオイルを薄く塗り伸ばすだけ。頻度は数ヶ月に一度で十分です。逆に、日々手で触れること自体が油分補給になるため、使い続けることが最大のお手入れともいえます。
顕著に経年変化が楽しめるのは、タンニン鞣し(植物タンニン鞣し)の革です。クロム鞣し革でも多少の変化はありますが、タンニン革のような劇的な色艶の変化は起きにくい傾向があります。商品ページの素材・タグ情報を参考にしてみてください。
どちらもイタリア産のタンニン鞣し革で、経年変化を楽しめる素材です。マルゴーはきめ細かく、使い始めからしなやかで扱いやすい印象。ヴァケッタはオイルを多く含み、よりコシと重厚感があります。「最初から柔らかく使いたい」ならマルゴー、「育てる楽しみをじっくり感じたい」ならヴァケッタが向いているかもしれません。
じっくり選ぶほど、革との時間が楽しくなる。
素材のことを知ってから手に取る革は、少し違って見えます。
どの革を選ぶか、どのバッグに仕立てるか。その選択のひとつひとつが、これからの経年変化の始まりです。





































